癌細胞への栄養供給ラインを制御する一対のタンパク質が発見される

癌細胞への栄養供給ラインを制御する一対のタンパク質が発見される健康

ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究者らは、ヒトのがん細胞およびマウスを用いた研究で、あるタンパク質が連携して、腫瘍に酸素と栄養を供給する供給ラインを構築し、腫瘍の生存と成長を可能にしていることを明らかにしました。

PADI4とHIF-1という2つのタンパク質は、急速に成長している腫瘍で通常見られる低酸素状態下で活動を活発化させ、癌の成長を促す新しい血管を作ることができます。

今回の発見は、血管の発達を阻害する抗がん剤治療の開発に新たな道を開くものであると研究者らは述べています。

本研究の詳細は、2021年8月27日付けでScience Advances誌のオンライン版に掲載されました。

ジョンズ・ホプキンス大学医学部のC. Michael Armstrong教授(遺伝子医学、小児科、腫瘍学、医学、放射線腫瘍学、生物化学)は、「今回の発見は、これらの経路を標的とした既存または新規の薬剤の組み合わせを見つけて、がんを治療し、薬剤耐性を防ぐ機会を与えてくれます。」と述べています。

Semenza氏は、ジョンズ・ホプキンス細胞工学研究所のVascular Programのディレクターも務めています。

Semenza氏は、HIF-1が細胞の低酸素濃度への適応能力を制御する仕組みを発見したことで、2019年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞しました。

彼の研究室などは、HIF-1(低酸素誘導因子1)が低酸素状態で5,000以上の遺伝子を活性化することを発見しました。

しかし、HIF-1がどのようにしてそれらの遺伝子を活性化させ、血管の成長を促すのかは正確にはわかっていませんでした。

細胞内では、DNAは負の電荷を帯びており、正の電荷を帯びたヒストンと呼ばれるタンパク質と相互作用することができます。

DNAは、使われていないときはヒストンに糸巻きのように巻きついています。

具体的には、PADI4が反応を起こし、ヒストンがプラスの電荷を失うことで、DNAが解きほぐされるのだとSemenza氏は言います。

HIF-1とPADI4の関係を調べるため、研究チームは、実験室で培養したヒトの乳がん細胞と肝臓がん細胞を用いて研究を行いました。

まず、細胞がPADI4を産生する能力を阻害し、その後、細胞を24時間低酸素状態にしました。

これらの細胞内の遺伝子活性を分析することにより、低酸素に反応してHIF-1がオンにする1,300の遺伝子のうち87%が、PADI4タンパク質を欠損した細胞ではオンにならないことがわかりました。

次に、このがん細胞をマウスの乳房組織に注入し、腫瘍の成長を追跡しました。

PADI4を持たない腫瘍は、正常なレベルのPADI4を持つ細胞から形成された腫瘍に比べて、5倍小さく、血管の発達も5倍少なかったのです。

このことから、生体内でPADI4を排除すると、腫瘍の成長力が損なわれることがわかりました。

今回のマウスでの発見は、ヒトのがんの研究と結びつけて考えることができると研究者らは述べています。

Semenza氏は、「がんの細胞生態系について知ることができれば、それだけがんを制御するチャンスが増えることになります。」と述べています。

Published by Johns Hopkins University School of Medicine. Yufeng Wang et al, Histone citrullination by PADI4 is required for HIF-dependent transcriptional responses to hypoxia and tumor vascularization, Science Advances (2021). DOI: 10.1126/sciadv.abe3771
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