電池リサイクルの経済性を高める画期的な研究

電池リサイクルの経済性を高める画期的な研究テクノロジー

電池のリサイクルを経済的に行うにはどうすればよいのでしょうか。

ReCellセンターの研究者たちは、その目標に向けて新たな一歩を踏み出しました。

リチウムイオン電池は、私たちのテクノロジーの現在と未来を支えるエンジンです。

リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンなどの携帯型電子機器や、人気が高まっている電気自動車(EV)の動力源となっています。

しかし、自動車を中心としたリチウムイオン電池の使用量の増加は、リサイクルの技術を上回っています。

このたび、米国エネルギー省アルゴンヌ国立研究所に設置された全米初の先進的なバッテリーリサイクル研究開発センター「ReCellセンター」の研究者たちが、リチウムイオン電池のリサイクルを経済的に実現するための最大の障害のひとつを取り除く重要な発見をしました。

現在使用されているリサイクルプロセスでは、電池メーカーにとって価値の低い形態の金属を回収することができます。

これでは、大きな問題が発生します。

研究者たちは、今後10年以内に、年間200万トンの電気自動車用の使用済みリチウムイオン電池が廃棄されると予測しています。

現在、電気自動車用の使用済みバッテリーの数は少ないですが、古いモデルの自動車が耐用年数を迎えると、その数は大幅に増加することが予想されます。

ReCellチームの一員であるミシガン工科大学(MTU)の研究者たちは、バッテリーの正電荷を帯びた電極である正極を構成する貴重な材料を分離する画期的なプロセスを開発しました。

アルゴンヌ国立研究所の材料工学研究施設の科学者たちは、MTUの革新的な分離プロセスをスケールアップし、電気自動車用バッテリーの大規模なリサイクルへの道を切り開いています。

EV用バッテリーの正極材料は、自動車メーカーや生産年によって異なるため、再利用するためには、コバルト酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、コバルトアルミニウム酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどのリチウム金属酸化物の混合物を、それぞれ分離しなければなりません。

今まで不可能だったことが可能になったのです。

MTUとReCell社の研究者たちは、査読付きの科学雑誌『Energy Technology』に掲載された新しい論文の中で、彼らの発見を詳しく説明しています。

それは、「泡沫浮選」と呼ばれる古いプロセスに新しい工夫を加えて、個々の正極材料を分離する方法です。

泡沫浮揚法は、長年にわたり鉱業界で鉱石の分離・精製に用いられてきた方法で、浮揚槽内の物質が水をはじいて浮くか、水を吸収して沈むかによって分離されます。

一般的に正極材は沈むため、分離が難しいとされています。

ReCellチームが実験に使用した電気自動車用正極材の代表格であるニッケルマンガンコバルト酸リチウム(NMC111)とマンガン酸リチウム(LMO)も同様です。

その結果、正極材の1つであるNMC111を、水を弾く化学物質を導入して浮かせれば、分離できることがわかったのです。

正極材を分離した後の実験では、電気化学的性能への影響はほとんどないことが確認されました。

また、どちらの正極材も95%以上の高純度でした。

アルゴンヌ国立研究所の材料科学者で本研究の共著者であるJessica Durham氏は、「これは非常に重要なことです。電池業界が新しい電池に再利用するためにリサイクルされた正極材料を購入するのであれば、純度を犠牲にするつもりはありませんから。」と述べています。

今回の研究は、エネルギー集約度の低い処理方法を進め、貴重な材料を回収してダイレクトリサイクル(化学構造を分解せずに直接、電池部品を回収・再生・再利用すること)につなげるというReCellセンターのミッションに関連しています。

このセンターは、アルゴンヌ国立研究所、DOEの国立再生可能エネルギー研究所とオークリッジ国立研究所、ミシガン工科大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ウースター工科大学の共同で運営されています。

ReCellの発見は、リチウムイオン電池のリサイクルコストの削減、使用済みリチウムイオン電池の収益性の高いリサイクル市場の成長に拍車をかける、生産者と消費者の両方にとってEVのコストを下げる、米国が世界の電池リサイクル産業で競争できるようにする、再生電池材料の国内調達を増やすことで米国のエネルギー独立性を強化する、米国の材料の海外調達への依存度を下げるなど、幅広い意味を持つことが期待されます。

現在、ReCellセンターのチームは、経済的に成り立つリチウムイオン電池の完全なリサイクルプロセスを段階的に構築することに集中しています。

そのためには、経済的に成立するリチウムイオン電池のリサイクルプロセスを段階的に構築することが必要です。

「どのような方法でリサイクルするにしても、リサイクル業者がそれによって利益を得られなければなりません。私たちは、最終的には全体のプロセスが利益を生むものでなければならないことを承知の上で、段階を踏んでいます。」

アルゴンヌ国立研究所では他にも、Albert Lipson氏(主任材料科学者)、Haruka Pinegar(博士研究員)らが本研究の共同執筆者として名を連ねています。

Published by Argonne National Laboratory. Tinu-Ololade Folayan et al, Direct Recycling of Blended Cathode Materials by Froth Flotation, Energy Technology (2021). DOI: 10.1002/ente.202100468

 

 

タイトルとURLをコピーしました