『戦うか逃げるか』「体内時計が乱れていなければ」正常に機能するとマウスの研究で判明

『戦うか逃げるか』「体内時計が乱れていなければ」正常に機能するとマウスの研究で判明生物学

人間も動物も、正常な行動や生理の多くの面で、体内時計「概日時計」が正しく機能していることは重要です。

その仕組みは、次のとおりです。脳が体に信号を送り、1日の特定の時間に異なるホルモンを分泌させます。

例えば、起床直前には、自然界に組み込まれた警報システムであるコルチゾールというホルモンが分泌されます。

しかし、ホルモンの分泌は、実際には、脳の複数の部分にある時計が相互に関連して活動していることに依存してます。

ワシントン大学セントルイス校の新しい研究では、視床下部の2つの部分、視交叉上核(SCN)と室傍核(PVN)に存在するニューロンの時計遺伝子と神経細胞の活動のリズムが、グルココルチコイド1コルチゾール系列のホルモンの毎日の分泌にどのように関係しているかを明らかにしました。

本研究は、自由行動をするマウスを用いて行われたもので、2021年10月1日付けでNature Communications誌に掲載されました。

テキサスA&M大学で生物学の博士研究員として本研究を主導し、最近、生物学の助教授として着任した Jeff Jones氏は、「正常な行動や生理は、さまざまなホルモンがほぼ24時間周期で放出されることに依存しています。ホルモンの放出が妨げられると、不安や抑うつなどの感情障害、糖尿病や肥満などの代謝障害など、数多くの病態を引き起こす可能性があります。」と述べています。

「私たちは、中枢の体内時計であるSCNと呼ばれる脳の小さな領域からの信号が、脳の他の部分でどのように解読され、ホルモン分泌の多様な概日リズムを生み出すのかを理解したいと思いました。」とJones氏は語り、ワシントン大学のヴィクトル・ハンブルガー芸術科学特別教授であり、今回の研究の上席著者であるErik Herzog氏と共同で研究を行いました。

ホルモン分泌の1日のタイミングは、SCNによって制御されています。

視床下部の視神経が交差する部分のすぐ上に位置するSCNのニューロンは、毎日信号を送り、その信号は脳の他の部分で解読され、副腎や体の内分泌システムに語りかけます。

ヒトのコルチゾール(マウスのコルチコステロン)は、典型的なストレスホルモンとして知られており、「闘争・逃走」反応に関与しています。

「しかし、目を覚まして一日の準備をするというストレスは、体にとって最大の定期的なストレスの一つです。このグルココルチコイドが起床時に大量に分泌されると、一日の準備が整うようです。」

ネズミの場合は夜に備えて。

人間が朝の通勤や困難な仕事に対処する準備をするのに役立つホルモンと同じものが、マウスがランニングホイールで夜の目標歩数を達成するのにも役立つのです。

Jones氏とHerzog氏は、新しい神経細胞の記録法を用いて、個々のマウスの脳活動を最長2週間にわたって記録しました。

Herzog氏は、「特定の種類の神経細胞の活動をこのような長期間にわたって記録することは難しく、データ量も多くなります。Jeff(Jones氏)は、行動する動物を長期的かつリアルタイムに観察するために、このような方法を開発しました。」と述べています。

研究チームは、それぞれのマウスの1日の休息行動とコルチコステロンの分泌量、脳内の特定の神経細胞の遺伝子発現と電気的活動の情報を用いて、グルココルチコイドの分泌を誘発するホルモンを産生するSCNとPVNの神経細胞の間の重要な回路を発見しました。

ホルモン分泌の日内リズムを調整するためには、SCNのニューロンが毎日信号を送るだけでは不十分で、PVNのニューロンにある「ローカル」な時計が正しく機能していなければならないことが判明したのです。

脳の概日信号を受信する領域にある時計遺伝子を排除した実験では、1日の規則的なサイクルが崩れてしまいました。

Jones氏は、「SCNの特定のニューロン群が、PVNのニューロン群にタイミング情報を伝達し、毎日のホルモン分泌を調整しています。ホルモンのリズムを正常に保つためには、中枢のペースメーカーとこの下流域の両方の時計が連動して働く必要があります。」と述べています。

今回のマウスでの発見は、将来的には人間にも影響を与える可能性があると、Jones氏は述べています。

コルチゾールに関連する疾患や遺伝性疾患に対する将来の治療法は、第2の体内時計の重要性を考慮に入れる必要があるでしょう。

Published by Washington University in St. Louis. Circadian neurons in the paraventricular nucleus entrain and sustain daily rhythms in glucocorticoids, Nature Communications (2021). DOI: 10.1038/s41467-021-25959-9
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