準結晶を蘇らせる。エキゾチックな素材を実用化するための発見

準結晶を蘇らせる。エキゾチックな素材を実用化するための発見化学
2つの準結晶が冷却中に融解し始める様子を上から見たX線トモグラフィーによる視覚化。©Shahani Group, University of Michigan

自己修復現象により、準結晶を実用化できない原因となっていた欠陥を減らすことに成功

太陽電池からフライパンまで、あらゆるものに革命を起こすかもしれないと思われながらも、2000年代初頭には人気を失っていた一群の材料が、商業的に復活する可能性があることが、ミシガン大学を中心とする研究チームの調査で明らかになりました。

Nature Communications誌に掲載された本研究では、過去の製造業者を悩ませ、準結晶が知的好奇心の対象から外されてしまう原因となっていた欠陥がなく、これまでよりもはるかに大きな準結晶を作る方法が示されています。

「準結晶が産業界から見放された理由の1つは、欠陥がたくさんあるからです。しかし私たちは、準結晶を再び主流にしたいと考えています。今回の研究は、それが可能であることを示唆しています。」と、ミシガン大学の材料科学・工学および化学工学の助教授であり、本論文の共同執筆者であるAshwin Shahani氏と述べています。

準結晶は、通常の結晶のような繰り返しパターンではなく、規則正しい構造を持っており、さまざまな魅力的な特性を持つ物質を製造することができます。

例えば、超硬質であったり、超滑性であったり。また、熱や光を異常に吸収したり、少し変わった電気的特性を示したりと、さまざまな可能性を秘めています。

しかし、準結晶を商品化したメーカーは、結晶と結晶の間にある「粒界」と呼ばれる小さな亀裂が腐食を招き、準結晶が故障しやすくなるという問題を発見しました。

それ以来、準結晶の実用化はほとんど見送られてきました。

しかし、Shahani氏の研究チームが新たに発見したのは、特定の条件下で、小さな準結晶を衝突させて融合させると、小さな結晶の集まりに見られる粒界の欠陥がない、単一の大きな結晶ができるということでした。

この現象は、準結晶の形成過程を観察するために行った実験で、意外にも発見されたとShahani氏は説明します。

2つの準結晶が冷却中に融解し始める様子を側面から見たX線トモグラフィーによる可視化。

2つの準結晶が冷却中に融解し始める様子を側面から見たX線トモグラフィーによる可視化。©Shahani Group, University of Michigan

「衝突後に結晶が自己修復して、ある種の欠陥が別の種類に変化し、最終的には完全に消滅しているように見えます。準結晶には周期性がないことを考えると、これは驚異的なことです。」と彼は言います。

結晶は、アルミニウム、コバルト、ニッケルの溶融混合物中に浮遊している、数ミリの鉛筆のような固体から始まり、研究チームはX線トモグラフィーを使ってリアルタイムで3D観察しました。

混合物が冷えると、小さな結晶同士が衝突して融合し、最終的には、構成されていた準結晶の数倍の大きさをもつ1つの大きな準結晶に変化するといいます。

研究チームは、アルゴンヌ国立研究所でこのプロセスを観察した後、コンピューターシミュレーションで仮想的に再現しました。

それぞれのシミュレーションを少しずつ異なる条件で実行することで、小さな結晶が大きな結晶に融合する条件を正確に特定することができたのです。

例えば、小さな鉛筆のような結晶は、ある一定の範囲内で向き合わないと、衝突して合体しないことがわかりました。

シミュレーションは、論文の原著者であるSharon Glotzer教授(John Werner Cahn Distinguished University Professor)の研究室で行われました。

Glotzer氏は、「実験とシミュレーションの両方で、同じ現象を同じ長さと時間のスケールで観察できるのは、とてもエキサイティングなことです。実験では見えなかった結晶化プロセスの詳細をシミュレーションで見ることができ、その逆もまた然りです。」

この技術の実用化はまだ先のことですが、今回のシミュレーションデータは、大きな準結晶を生産規模で効率的に製造するプロセスの開発に役立つ可能性があります。

Shahani氏は、熱と圧力を利用して材料を融合させる有名な工業プロセスである焼結の利用を想定しており、まだまだ先の目標ですが、今回の研究は、いつの日か実現できるかもしれない新しい研究の道を開くものだと言います。

今のところ、Shahani氏とGlotzer氏は、準結晶の欠陥がどのように形成され、移動し、進化するのかなど、準結晶の欠陥についての理解を深めるために協力しています。

論文のタイトルは、”Formation of a Single Quasicrystal Upon Collision of Multiple Grains”(複数の結晶粒の衝突による単一準結晶の形成)。研究チームには、ブルックヘブン国立研究所も参加しています。

Published by University of Michigan. Insung Han et al., Formation of a single quasicrystal upon collision of multiple grains. Nature Communications, 2021; 12 (1) DOI: 10.1038/s41467-021-26070-9
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