ステーキを切り裂くステンレスより硬い木のナイフを研究者が製作

ステーキを切り裂く硬い木のナイフを研究者が製作 化学

メリーランド大学の研究者たちは、より持続可能な方法で木材を用いて鋭いナイフを作ることができる方法を開発しました。

2021年10月20日付の学術誌「Matter」で発表されたこの方法では、木材を23倍も硬くすることができ、その材料で作られたナイフは、ステンレス製のディナーテーブルナイフの約3倍の切れ味を実現しています。

切れ味のよいナイフは、スチールかセラミックで作られていますが、これらはいずれも人工材料であり、高温の炉の中で鍛造しなければなりません。

この研究の上席著者でメリーランド大学の材料科学者であるTeng Li氏は、「このナイフは、ディナーテーブルナイフと同じような性能で、ミディアムウェルのステーキを簡単に切り分けることができます。」と述べています。

硬化した木のナイフは洗って再利用することができ、スチールやセラミック、使い捨てのプラスチック製ナイフに代わる有望な素材となっています。

また、Li氏のチームは、この素材を使って、従来のスチール製の釘と同等の切れ味を持つ木の釘を製造できることを示しました。

また、スチール製の釘とは異なり、木製の釘は錆びにくいのです。

この木の釘を使って、3枚の板をハンマーで打ち付けても、釘が損傷することはないことを示しました。

Li氏は、ナイフや釘だけでなく、将来的には、傷や摩耗に強い広葉樹の床材にも使えるのではないかと期待している。

Li氏が開発した硬化木材の製造方法は新しいものですが、一般的な木材加工は何世紀にもわたって行われてきました。

しかし、家具や建材用に木材を用意する場合は、蒸気や圧縮などの加工が行われるだけで、形を整えた後は素材が多少反発します。

「日常生活で使う硬い素材を見渡してみると、その多くが人工物です。自然素材では必ずしも満足できないからです。木材の主成分であるセルロースは、セラミックや金属、ポリマーなどの人工材料に比べて、強度と密度の比率が高いのですが、私たちが使っている木材は、その潜在能力をほとんど発揮していません。」とLi氏は言います。

動画:硬化した木のナイフでステーキを切る研究者。©Bo Chen

建築物によく使われているとはいえ、木材の強度はセルロースには及びません。

木材は、セルロースが40〜50%しかなく、残りはヘミセルロースとバインダー1物と物を接着する物質の役割を果たすリグニンで構成されているからです。

Li氏らは、セルロースの構造を壊さずに、弱い成分を取り除くように木材を加工しようと考えました。

「プロセスは2段階です。第1段階では、木材を部分的に脱リグニンします。通常、木材は非常に硬いのですが、リグニンを除去すると、柔らかく、柔軟で、多少ふにゃふにゃになります。第2段階では、化学処理された木材に圧力と熱を加えて高密度化し、水分を除去するホットプレスを行います。」とLi氏は言います。

加工された素材は、目的の形に加工された後、寿命を延ばすためにミネラルオイルでコーティングされます。

セルロースは水分を吸収しやすいので、このコーティングにより、使用中はもちろん、シンクや食器洗い機で洗っても、ナイフの切れ味が保たれます。

動画:硬化した木の釘で3枚の板を打ち付ける研究者。©Bo Chen

Li氏とそのチームは、高解像度の顕微鏡を使って、硬化した木材の微細構造を調べ、その強度の起源を明らかにしました。

「材料の強度は、空洞や溝、穴などの欠陥の大きさや密度に非常に敏感です。私たちが天然木を加工する際に用いている2段階のプロセスは、天然木の欠陥を大幅に減少または除去するので、木の中の水やその他の栄養分を運ぶための経路はほとんどなくなっています。」とLi氏は言います。

この木材硬化プロセスは、他の人工材料の製造に比べてエネルギー効率が高く、環境への影響が少ない可能性がありますが、確かなことを言うにはさらに詳細な分析が必要です。

最初のステップでは、木材を化学薬品の入ったバスで100℃に加熱する必要がありますが、これはバッチ2ひとまとまりの数量ごとに再利用できる可能性があります。

ちなみに、セラミックスの製造工程では、数千度の熱を加える必要があります。

「私たちのキッチンには、まな板や箸、麺棒など、長く使う木の部品がたくさんあります。これらの包丁も、表面処理をして、研いで、同じように定期的に手入れをすれば、何度も使うことができます。」

Published by Cell Press, University of Maryland. Teng Li, Hardened Wood as a Renewable Alternative to Steel and Plastic, Matter (2021). DOI: 10.1016/j.matt.2021.09.020.