毛髪幹細胞が逃げ出すことによって、脱毛を引き起こすことを発見

幹細胞が逃げ出すことによって、脱毛を引き起こすことを発見 健康

老化した雄のマウスに新たに発見されたハゲの原因は、ヒトの男性や女性の脱毛の原因にもなる可能性があることが、ノースウェスタン医学研究所の研究者らによって報告されました。

この研究結果は、毛髪や組織がどのように老化していくのかについて、新たな知見を与えるものです。

2021年10月にNature Aging誌に掲載されたこの研究によると、毛髪幹細胞が老化すると、毛包内に留まっている粘着性が失われます。

幹細胞は、粘着性が低下すると、バルジと呼ばれる場所から真皮に逃げ出します。

繊細な微小環境の外では、一般的に幹細胞は生きられません。

ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部病理学の教授である筆頭著者のRui Yi氏は、「毛包内で髪を生成する幹細胞の数がどんどん減っていきます。その結果、加齢に伴って髪が薄くなり、最終的にはハゲてしまうのです。」と述べています。

この発見は、マウスと人間の毛髪や幹細胞には多くの共通点があるため、薄毛に悩む高齢の男性や女性にも当てはまる可能性があるとYi氏は言います。

毛包の老化を生きた動物で追跡したのは今回が初めてで、老化のプロセスを細胞レベルでリアルタイムに把握することができました。

また、幹細胞の接着性を高める鍵となる2つの遺伝子も発見されました。

現在の研究では、これらの遺伝子を復活させることで抜け毛が回復するかどうかを調べています。

毛包は常に生と死を繰り返している

毛包は、生と死のサイクルを繰り返しています。

このサイクルの間、多くの幹細胞が毛包の幹細胞コンパートメントに永久に留まり、毛包細胞を作り続けます。

今回の研究では、薄毛やハゲの原因となる加齢によって、この幹細胞がどのように変化するかを明らかにしました。

本研究の意義

「この幹細胞逃避メカニズムは、これまで報告されたことがなかったと考えられます。なぜなら、生きた動物で老化のプロセスを追跡することができなかったからです。」とYi氏は述べています。

科学者たちは、加齢によって毛包が小さくなることを知っていました。

しかし、それがどのように起こるのかは明らかではありませんでした。

多くの科学者は、加齢により細胞死や細胞分裂ができなくなることが原因だと考えていました。

「私たちは、少なくとも一部は、毛包幹細胞が幹細胞ニッチ1幹細胞が各組織中に局在する場から移動することが原因であることを発見しました。私たちの観察では、細胞死も起こっています。つまり、今回の発見は、既存の理論を否定するものではなく、新たなメカニズムを提供するものなのです。」とYi氏は言います。

研究の方法

研究者たちは、生きたマウスの毛包細胞(幹細胞を含む)を緑色蛍光タンパク質で標識し、長い波長のレーザーを用いて、加齢中の毛包細胞を観察しました。

同じ毛包を何日も繰り返し観察しました(1つの毛包を26日間観察し、毛包が劣化する過程をすべて見た例もあります)。

その結果、細胞が異常に逃げ出していることがわかりました。

次に、毛包幹細胞の遺伝子発現量を老齢の動物と若齢の動物で比較しました。

すると、老齢の毛包幹細胞では、接着を司る遺伝子の発現が少ないことがわかったのです。

そこで研究者たちは、これらの細胞接着遺伝子を制御している可能性のある特殊な遺伝子群を特定しました。

そして、この2つの遺伝子、FOXC1とNFATC1を遺伝子操作で欠損させた変異体を作りました。

その結果、4カ月目から急速に脱毛が進行しました。

そして、12〜16ヵ月後には完全に禿げてしまったのです。

最後に、研究者らはライブイメージングを用いて、これらの突然変異マウスにおける幹細胞の逃避を観察し、幹細胞が幹細胞ニッチから移動する様子を捉えました。

ノースウェスタン大学の他の著者は、Chi Zhang氏(客員学生)、Dongmei Wang氏、Jingjing Wang氏、久米努博士です。

Published by Northwestern University. Chi Zhang et al, Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging, Nature Aging (2021). DOI: 10.1038/s43587-021-00103-w