精子は卵子を探すために泳ぎ方を変える

精子は卵子を探すために泳ぎ方を変える 生物学

今回の研究では、精子が卵子にたどり着くためにどのように泳ぎ方を変えているのかが明らかになりました。

精子の泳ぎ方は、直線的に移動する動きから、円を描くように泳ぐ動きへと変化します。

ハイパーアクティベーションと呼ばれるこの行動の変化により、精子は卵子の近くに来た時、その場所を一掃することができ、卵子を見つける確率が向上します。

今回の研究では、顕微鏡と高速度カメラを使ってウシの精子を観察できるよう、ミクロン単位の流路を持つマイクロ流体チップを設計しました。

今回の研究では、精子が卵子までどのように移動するのかという謎が解明されただけでなく、ヒトの体外受精や乳牛の生殖にも影響を与え、エンジニアがロボットのマイクロスイマーを設計する際の新たな情報を提供することにもなりました。

本論文の上席著者であり、コーネル大学農学生命科学部食品科学科准教授のAlireza Abbaspourrad氏は、「精子が卵子にたどり着くための航行メカニズムや生物物理学的・生化学的な手がかりが何によって決まるのかを理解することで、これらの手がかりを利用して不妊問題を抱えるカップルを治療したり、体外受精に最適な戦略を選択したりすることができるようになるかもしれません。」と述べています。

研究論文「Mammalian Sperm Hyperactivation Regulates Navigation Via Physical Boundaries and promotes Pseudo-Chemotaxis」は、2021年10月29日、米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン版に掲載されました。

この論文では、数百万の精子が雌の生殖管内を移動し、最終的に受精場所に到達するのはほんの一握りであることを明らかにしています。

精子は側壁に密着し、生殖管の上部から下部に流れる少量の液体に対して一直線に泳ぎます。

しかし、精子が子宮結合部に到達し、卵管に入り、卵子に向かって移動すると、精子の鞭毛にカルシウムイオンが流入することで、活性化が促進され、円を描くように泳ぐようになります。

鞭毛にカルシウムイオンが流入するきっかけを正確に理解するには、さらなる研究が必要です。

Sperm switch swimming patterns to locate egg

マイクロ流体チップを使うことで、研究者たちは環境を操作することができました。

研究チームは、精子がマイクロ流体チャンバー1中球、ヒト乳癌細胞、その他の種類の細胞の走化性の研究に使用されるの壁に沿って泳ぐ様子を記録しました。

次に、細胞質内のカルシウムイオンを増加させるカフェインなどの化合物を実験しました。

その結果、カルシウムが存在すると、精子の行動が、壁に沿った直進的な泳ぎから、壁に寄り添わなくなるほど活発な旋回的な泳ぎに変わることが記録されました。

この変化がなければ、精子は行き止まりにぶつかって動けなくなる可能性があります。

「この遊泳状態が受精に必要であることが明らかになりました。」とAbbaspourrad氏は述べています。

今回の観察は、実験室内の人工的な環境で行われたものですが、生体内で何が起こっているかを示すものであるといいます。

論文の筆頭著者でAbbaspourrad氏の研究室の大学院生であるMeisam Zaferani氏は、「精子が受精場所に向かって進む際に、精管内の機能領域に応じて、また精子が環境中に存在する生化学的因子に反応する際に、ハイパーアクティベーションが起こり、精子の遊泳行動を変化させると考えています。」と述べています。

また、生物医学の名誉教授であるSusan Suarez氏が共著者として名を連ねています。

Published by Cornell University. Meisam Zaferani et al, Mammalian sperm hyperactivation regulates navigation via physical boundaries and promotes pseudo-chemotaxis, Proceedings of the National Academy of Sciences (2021). DOI: 10.1073/pnas.2107500118