気候変動による海面上昇で街を保護したり移転する場合どれだけの費用が掛かるのか?:気候難民

気候変動による海面上昇で街を保護したり移転する場合どれだけの費用が掛かるのか?:気候難民 地球
気候変動による海面上昇で街が湿地化している©David Schulte

米国チェサピーク湾のタンジア島にあるタンジアの町は、1967年以降、居住可能な高地の62%が失われたことが新しい研究で明らかになりました。

今後15年から30年の間にさらに減少し、何百人もの人々が家や収入を失うことになると考えられています。

研究者たちは、この町を完全に保護・修復するには、およそ2億5000万ドルから3億5000万ドルの費用がかかると見積もっています。

タンジア島の事例は、気候危機による海面上昇の継続と人間の移動がもたらす結果を示す典型的な例です。

気候危機の影響は、世界中で見ることができます。

過去7年間は記録的な暖かさで、異常気象、異常干ばつ、地球規模の海面上昇など、気候危機に関連した変化の将来予測は、これまで考えられていたよりも深刻であることが研究で明らかになっています。

IPCCの最新の評価報告書によると、継続的な海面上昇は、気候危機の最も深刻な影響の一つです。

海面上昇は、動植物の生息地の喪失、ハリケーンや台風の深刻化、人間の居住可能な土地の喪失などにつながります。

最終的には、海面上昇によって人々は高台への移住を余儀なくされ、気候難民を生み出すことになります。

人為的な海面上昇がもたらす結果の顕著な例として、アメリカのチェサピーク湾に浮かぶタンジア島のタンジアのケースがあります。

タンジア島はチェサピーク湾に残る最後の有人島の1つで、主に漁業を営んでいます。

1900年代初頭には1,100人以上いた人口が、2020年には436人にまで縮小しており、3つの高台で構成されています。

Frontiers in Climate誌に掲載された新しい研究によると、タンジアは元々居住可能だった高地のかなりの部分を失い、今後15~30年以内に居住可能な土地をすべて失うことになるといいます。

「私たちの研究は、海面上昇がすでにアメリカの小さな町に深刻な影響を与えていることを示しています。まもなく、バージニア州最後の孤立した漁村の住人であるこれらのアメリカ人は、気候変動難民となり、移転を余儀なくされるでしょう。」と、筆頭著者である米ウィリアム・アンド・メアリー大学のDavid Schulte氏は述べています。

Schulte氏が2015年に発表した論文によると、タンジア島は1850年以降、相対的な海面上昇と海岸浸食の組み合わせにより、総面積の67%が失われたといいます。

この論文が発表された後、タンジアの陸地喪失は海岸侵食だけが原因であるという誤った情報が流れたといいます。

今回の研究は、2015年の論文のフォローアップであり、海面上昇がタンジアに与える影響を明らかにするとともに、最初の研究の後にあった気候危機関連の誤った情報を明らかにすることを目的としています。

町全体を移動させるにはどれだけの費用が必要か?

海面上昇により庭が湿地化している

海面上昇により庭が湿地化している。©USACE, Norfolk District/Patrick Bloodgood

海面上昇が町に与える影響を明らかにするために、研究者たちは地元の海面上昇データを分析し、高地から湿地への転換率と人口減少率を比較しました。

その結果、2019年時点で、1967年以降、町は元の居住可能な高地の62%を失っていることがわかりました。

また、相対的な海面上昇が予測通りに続いた場合、各尾根が完全に湿地に変換される年は、2033年(西尾根)、2035年(主尾根)、2050年(カントン尾根)であることが分かりました。

「我々は、チェサピーク湾地域の局所的な海面上昇が世界平均よりも高く、世界平均の速度と同様の傾向で加速していることを指摘しました。高台の湿地への転換率は、それを後押ししている海面上昇と同様に、おおむね加速傾向にありました。」とSchulte氏は説明します。

研究者たちはまた、タンジアを移転させるためにかかる費用と、保護・復元するためにかかる費用を見積もりました。

この試算は、米国連邦政府が小規模な沿岸地域を海面上昇から守るために行っている同様の取り組みを参考にして作成しました。

論文著者は、町を完全に保護・復元するためには、およそ2億5000万ドルから3億5000万ドルの費用がかかると見積もっています。

この試算に含まれる必要な措置は、例えば、島の脆弱な海岸線への防波堤設置、浚渫砂を使って3つの尾根を3メートル高くしたりすることです。

牡蠣礁などの自然を利用した対策には、1ヘクタールあたり10〜30万ドルの追加費用がかかる可能性があります。

島からの人間の脱出が避けられなくなった場合、436人の住民が住む町の移転にかかる費用は、1億ドルから2億ドルと見積もられています。

世界に警鐘を鳴らす

著者は、2053年にはタンジアの人口がゼロになると予測していますが、これは高地から湿地への転換率と平行しています。

人口減少の原因は海面上昇だけではありませんが、新たな商業施設や住宅用地の不足など、町が抱える社会問題の多くは海面上昇と関連しています。

最終的には、気候危機はすべての人に影響を与えます。

アメリカ人の大半は沿岸部の都市に住んでおり、タンジア島は海面上昇が続くことによる影響や経済的コストを警告しているのです。

「私たちの研究では、米国における海面上昇の影響は、一部の地域ではすでに深刻で、人々は移転を余儀なくされていますが、ほとんどの米国人は(ほとんどが誤った情報のために)それが起こっていることを認識していません。我々のデータと分析は、世界中の他の多くの沿岸地域と同様に、タンジア島もほとんど時間がないことを示唆しています。」とSchulte氏は結論づけています。

Provided by Frontiers. Zehao Wu and David Schulte. Predictions of the Climate Change-Driven Exodus of the Town of Tangier, the Last Offshore Island Fishing Community in Virginia’s Chesapeake Bay. Frontiers(2021). DOI: 10.3389/fclim.2021.779774.